毒ガ森山塊

花巻市西方には、 豊沢湖周辺に標高900メートル前後の峰々が連なっています。
宮沢賢治の童話「なめとこ山の熊」の舞台にもなった豊沢川源流域を含む橅原生林に覆われた雄大で美しい風景がそこにあります。

毒ガ森山塊


 花巻市の西方に位置する豊沢湖を取り囲むように連なる、小倉山・毒ガ森・駒頭山・松倉山などの標高900メートル前後の山々を統して
 毒ガ森山塊と呼ばれています。

 毒ガ森の読み方は、(ぶすがもり)となりまして、読み方から本来は、付子ガ森と書くのですが、この付子(ぶす)とは、山鳥兜の塊根を乾か
 した毒薬の事でして、付子=毒で現在の読み方の地名となったそうです。

 毒ガ森山塊には、美しい山々の四季の眺めや、心和ませる滝の流れなどの景色に加え、日本氈鹿・日本鹿・本土狐・本土狸・月輪熊などの
 野生動物がたくさん生息していまして、実に感動的な自然に出会う事ができます。

 毒ガ森山塊に行くには、南豊沢川林道経由の出羽沢林道と寒沢川林道を利用すれば、車で簡単に進入することが出来ます。

 出羽沢林道は、豊沢湖上流部から始まる林道で比較的整備されていますが、稀に崖崩れ等で通行止めになっている場合もありますので、
 事前に確認した方が良いと思います。

 松倉山への登山口もあり、毒ガ森山塊に魅せられて訪れる入山者も多いようです。

 寒沢川林道は、高村山荘から西側に八方山と茅森山の間を抜けるように伸びていまして、駒頭山への登山口に進む事ができますが、現在
 では、林道の土壌流出や崖崩れなどで残念ながら廃道に近い状態になっています。


−豊沢湖から見た毒ガ森山塊−


−大空滝への登口から見た毒ガ森山塊−


−旧県道12号線から見た小倉山周辺−


−出羽沢林道から見た松倉山周辺−


−寒沢川林道から見た天ガ森周辺−

なめとこ山


 宮沢賢治の童話 「なめとこ山の熊」 から名前をいただいた山が「なめとこ山」です。

 童話のイメージ通りに濃い霧のかかった山の姿は、とても神秘的でした。

 登山道が全く整備されていないので、豊沢湖の青少年野外活動センター前の橋にある案内板から眺めているだけで我慢したいと思います。

 道路の地面に描かれた熊の足跡の場所から、橋に設置されている透明な案内板を見ると、白線で「なめとこ山」の位置を簡単に知る事ができ
 る様になっています。



−なめとこ山−

大空滝


 毒ガ森山塊の中で最も雄大な風景に出会えるのが「大空滝」周辺の景観になると思います。

 岩手県内でも最大の落差を誇る「大空滝」は、下の部分から滝を見上げると、まるで空から滝が流れ落ちてくる様に感じる程の衝撃的な印象を
 与えてくれます。

 以前は、滝のすぐ近くまで車で進入できたのですが、現在では、新しい県道12号線の開通に伴って廃道となってしまい、辛うじて花巻市側から
 なら徒歩移動で進入する事ができますが、西和賀町側の峠越えの方は、とても歩けない程に荒れてしまっているのが残念に思います。


−大空滝の上段部分−


−大空滝の中段部分−


−大空滝の下段部分−

大変成ノ滝


 毒ガ森山塊の中で「大空滝」と並んで有名な滝が「大変成ノ滝」です。

 古くから山伏による干天の雨乞いの場所として知られている滝でして、垂直な岩肌を流れ落ちる雄大な滝の姿は、岩手県内でも最も眺めの
 素晴らしい滝の一つになると思います。

 以前は、かなり奥に在る林道終点となる毒ガ森への山道口まで普通に車で進入できたのですが、最近では、まったく林道の整備がされて
 おらず、辛うじて滝までは、なんとか踏み跡が残っている程度の荒れた山道へと変わり果ててしまいました。

 大変成沢林道をだいぶ奥まで進んだ斜面に滝へと続く山道分岐があるのですが、案内板などが全く無いですので、場所を知らなければ発見
 する事さえ難しいと思いますので、迷って発見できずに引き返す人も多く、幻の滝などとも呼ばれていたりもします。

 尚、大変成沢林道とは別に、県道12号線から滝への峰伝いの登山道も整備されていたのですが、今では、完全に踏み跡も消えて廃道と
 なっていますので、なんとも残念に思ってもいます。


−大変成林道より望む毒ガ森山塊−


−毒ガ森山中の老木−


−大変成ノ滝−

白沢


 毒ガ森山塊の最も麓部分となる豊沢川支流の白沢(しろさわ)は、豊沢村の白沢牧として牛や羊などの放牧地ともなっていた場所でした。

 現在では、狩猟をしている人達が稀に白沢林道を利用するくらいになっておりまして、殆ど人が入る事が無いですので、自然がそのままに残さ
 れている景観を気軽に実感する事のできる場所になっております。

 豊沢湖の水位が下がっている時期には、水没した豊沢村跡地と合わせて自然散策ができる場所にもなっておりまして、豊沢湖周辺や南豊沢
 川林道から白沢林道までの区間は、実に山野草も豊富で見事な花畑が点在しています。

 あと、もの凄い数の日本金蛇の生息地ともなっておりまして、枯草の中を一歩でもあるけば、驚いて一斉に逃げ惑う日本金蛇の足音に、逆に
 こちらが驚かされる事にもなると思います。

 この豊沢と言う地名は、里から遠い場所に在る沢と言う意味で遠胆沢(とおいさわ)と呼ばれていたものが、読み方が転じて(といさわ)と成り、
 その後、現在の(とよさわ)の呼び方に合わせて豊沢の漢字が充てられたものでして、この地域の雰囲気をうまく表現していると思います。
 


−白沢−


−豊沢村跡地−


−日本金蛇−


−福寿草−


−片栗−


−水芭蕉−


−延胡索−


−黄華鬘−


−白根葵−

蓮滝


 豊沢川からなめとこ山を挟んで反対側にある高松沢も、とても眺めが素晴らしい場所になっています。

 新緑の季節ともなると、まるで緑の洞窟の中を通っているかの様な錯覚を受けてしまいそうな眩しい景色が続いています。

 そして、高松沢で唯一名称がついている「蓮滝」周辺では、とても素晴らしい景色が広がっていまして、初春の新緑から晩秋の紅葉まで何度
 でも訪れてしまいそうな場所になると思います。

 但し、新しい県道12号線の開通に伴って、道路としての重要性が低くなってしまい、あまり整備がされなくもなっていますので、現在では、
 落石などに注意しての林道通行となってしまっているのが残念です。


−高松沢の無名滝−


−蓮滝−

撮影をした時期のフィルムや機材の違いによって、掲載写真の仕上がりに、
かなりの違いが出てくる事もありますので、統一感が無くお見苦しいかとも思われますが、ご了承ください。

この他にも、まだまだ紹介したい場所がたくさんあるのですが、
自分で満足のいく写真を撮ることができたら、順次紹介していきたいと思っています。

「美しき自然」にもどる。