葛丸川源流

四季を通して、何時訪れても自然の素晴らしさを実感できる場所です。
特に冬の「たろし滝」には、とてもこの時期の山間部と思えない程に、多くの訪問者で賑わっています。

葛丸川渓流


 花巻市の北側に広がる葛丸渓谷の入口部分を葛丸川渓流とも呼んでいまして、この渓流内での見所が「一ノ滝」と「たろし滝」になります。

 「一ノ滝」は、渓谷に入って最初の大きな滝でして、すざまじい水飛沫と轟音が響き渡っています。

 「たろし滝」は、夏場に訪れても滝と呼ぶには、かなり水量が少ないのですが、厳寒期になると沢水が崖の中腹で凍ってできる氷柱が、まるで
 滝が凍ったように見える事から、「たろし滝」と呼ばれています。

 この地方の方言でつららの事をたろしと言うそうで、氷柱の太さは最大で8メートルにもなりまして、この「たろし滝」を見ようと、毎年たくさんの
 人達が積雪の多い山道を歩いて訪れます。

 どちらの滝も観光名所になっている眺めの素晴らしい場所です。

 葛丸川渓流の部分は、だいぶ奥に在る葛丸ダム(葛丸湖)までの区間が舗装道路で整備されていますので、普通の乗用車でも気軽に進入
 する事ができる場所でもありますので、ぜひ皆さんにも訪れてもらいたいです。



−一ノ滝−



−たろし滝−



−たろし滝−


−たろし滝−


−たろし滝−

黒滝


 葛丸ダム(葛丸湖)より奥には、砂利道の林道が雫石方面に向かって続いています。

 このまま進むと雫石町に抜けることができますが、落石が多い悪路が続きますし、峠付近で草が林道に覆い被さるように塞がっている事もあり
 ますので、車に傷など付けない様に慎重に走行して下さい。

 崖崩れや路肩崩壊などの危険な場所も多いので、雨上がりなどで少しでも危険を感じたら、先に進まないようにしたいです。

 そんな林道の中で最も眺めの良い場所が「黒滝」で、豪快に流れ落ちる水の景色が素晴らしいです。

 上の写真は、「黒滝」の全容がわかるようにと、手前の枝が芽吹く前に撮影したものですが、もちろん新緑から紅葉の季節も素晴らしく、訪れる
 釣り人や山菜取りの人達にも人気がある場所になっています。



−黒滝−

葛丸渓谷


 葛丸湖を越えて、葛丸川に沿って山間部に入ると、そこからが葛丸渓谷と呼ばれている地域になります。

 「音倉ノ滝」辺りまで進むと、もう人と出会うことも少なくなりますが、その代わりに狐や熊などの野生動物と出会える場所にもなります。

 林道の奥まで車で移動できますので、十分な装備を持たないで入ってくる釣り人や山菜取りの人達をよく見ますが、せめて熊除けの鈴だけ
 でも持って来てもらいなと思います。

 葛丸川の流れを見ているだけでも非常に素晴らしい景色なのですが、特に紅葉の季節を迎えると、落葉で敷き詰められた川の流れが他の
 季節とは、明らかに迫力が違ってきます。

 葛丸川に沿って林道が整備されていますので、渓谷の素晴らしい眺めを実感しながらの走行となりますので、紅葉の時期の自動車の運転
 には、十分に注意して下さい。

 「五両ノ滝」を過ぎて少しだけ標高を上げると、ふたつの沢の合流地点となる葛丸川始点になります。


−葛丸川上流域−


−音倉ノ滝−


−五両ノ滝−

不動ノ下滝


 葛丸渓谷の中で最大の落差を誇るのが、この「不動ノ下滝」になると思います。

 葛丸川の支流となる下滝沢にある滝でして、落差の1/2〜1/3程度は、周辺の落石によって埋まってしまっているのが残念なのですが、
 それでも垂直な岩肌を沢水が流れ落ちる姿は、とても素晴らしい眺めとなっています。

 林道から滝までの距離が比較的短いのですが、それでも水量の多い時期ですと、至る所で周辺斜面から沢水が溢れ出していますので、落石
 などの危険性が高まりますので、できるでけ地盤の安定した状態の時に訪れてもらいたいと思います。



−斜面を流れ落ちる沢水−



−不動ノ下滝−

崩れ埋まる川


 
 葛丸川は、地元の人達からは「崩れ埋まる川」と昔から呼ばれていたそうです。

 「クズレウマル」が「クズマル」と短くなり、当て字で現在の「葛丸」になったそうです。

 実際に葛丸川上流域に行ってみると、葛丸川に沿って整備されている林道が、落石や土砂などで埋まっている事もありまして、 途中から
 崖崩れの危険が高くなる場所では、車両通行止めの看板が設置されていたりもしています。

 そんな葛丸川にある滝で最上流に位置する無名滝は、まさに「崩れ埋まる川」を実感させてくれます。

 四つの滝が連続しているのですが、簡単に崩れやすい地層が水の流れで浸食された形跡が、はっきりと確認できます。

 下流から数えて最初の滝は、侵食により落差が低くなっていますが、横に広くて滝壷も大きいので、侵食される前には、相当に大きな滝だった
 事が予想されます。

 下流から数えて二番目の滝でも、この滝の横に流れの殆ど無い部分があるのですが、ここに深い滝壷がある事から、ここも侵食される前は、
 相当に大きな滝があったと予想されます。

 下流から数えて三番目の滝も、ここも他の滝同様に深い滝壷がある事から、以前は、大きな滝だったと予想されます。

 下流から数えて四番目の滝は、手前の三つの滝が侵食によって、ここまで後退したものと考えられます。

 この四つの滝は、絶えず変わり続ける自然の造形美を感じられる、素晴らしい場所になっています。

 葛丸渓谷の奥まで行くことがあれば、ぜひ行ってもらいたい場所です。

 手前の滝から奥の滝までの距離は、およそ150メートル前後だと思いますが、どれだけの年月を費やして、ここまで移動したのかなと考える
 と、色々な想像ができて楽しいものです。


−最初の滝跡−


−二番目の滝跡−


−三番目の滝跡−


−葛丸川で最上流に位置する無名滝−

青ノ木森


 葛丸川の始点を越えると、青ノ木森からの二つの沢に分かれてしまいます。

 高狸山へと進む西ノ股沢は、途中で林道が無くなってしまいますが、北ノ股沢の方に伸びる荒沢林道を進むと、雫石町との市境の峠を越えて
 鍵掛峠との林道交流地点を経て、県道1号線の大村方面へと抜ける事ができます。

 この葛丸川始点から市境までの青ノ木森東側は、広大な山野草の群生地にもなっていまして、雪解け後からは、片栗や岩団扇に山延胡索
 などの早春の山野草が見頃を迎える素晴らしい風景が広がっています。

 葛丸川は、青ノ木森源流域から葛丸渓谷へと、そして葛丸湖から葛丸川渓流へと、流れによって様々な景観に富んだ素晴らしい風景を見せて
 くれる場所になっています。


−日本氈鹿−


−青ノ木森の無名滝−


−片栗−

撮影をした時期のフィルムや機材の違いによって、掲載写真の仕上がりに、
かなりの違いが出てくる事もありますので、統一感が無くお見苦しいかとも思われますが、ご了承ください。

この他にも、まだまだ紹介したい場所がたくさんあるのですが、
自分で満足のいく写真を撮ることができたら、順次紹介していきたいと思っています。

「美しき自然」にもどる。