写真講座

初心者を対象とした、とても簡単な風景写真の撮影講座です。

写真講座4:フィルムの選び方

フィルムには、実に様々な種類が存在しています。
すべてを把握する必要は、まったくありませんが、ある程度の種類を理解していないと、撮影に影響も出てくる程の大切な要素も含まれていま
すので、ここで説明したいと思います。

最初に、フィルムの基本的な種類について説明をします。

●白黒フィルム

 白黒フィルムとは、モノクロフィルム(モノクロームフィルム)とも呼ばれており、被写体の単一の色相を、白と黒の明暗で記録するフィルムです。

 日本国内では、基本的に白黒フィルムと呼ばれていますが、一部のメーカーでは、黒白フィルムと呼ぶ場合もありまして、統一感が無いのです
 が、どちらの呼び方をしても、意味さえ通じれば良い状態となっております。

 一般的には、可視光線の全波長に感光域を持っている全整色性の記録方式(パンクロマティックフィルム)なのですが、可視光線の一部の
 波長(590nm以下)のみを記録する記録方式(オルソクロマチックフィルム)もありますので、購入時には、注意してください。

 以前は、とても豊富な種類があったのですが、現在では、かなり種類が縮小されながらも、なんとか販売が続けられています。

●赤外フィルム

 赤外フィルムとは、人間の視覚に感じる事の無い赤外域にも感光波長域
 を持ったフィルムです。

 霞んだ遠景写真でも克明に描写される場合がありまして、風景写真では、
 好んで使われる方も多く、航空写真や文書鑑定などの化学調査や、医学
 や生物学などの研究にも使われていました。

 使用に関しては、短波長光域を吸収する必要性が在り、フィルムの感光
 極大に合わせた吸収フィルターを使用する事になります。

 一般的なレンズの距離計には、赤いRの指標が印字されていますが、
 これは、赤外フィルムを使った場合に、普通の白黒フィルムを使った場合
 と比べて、僅かにピントの位置が違ってきますので、それを調整する為に
 あります。

 現在では、残念ながら国内での生産が終了していまして、僅かに海外
 からの輸入品を利用する事ができます。


●カラーフィルム

 カラーフィルムとは、被写体の色彩と明暗を減色法で記録する多層構成のフィルムです。

 基本的には、赤色感光層と緑色感光層に青色感光層のRGB三層構造になっていまして、撮影時に各感光層が特定の光の色に感光して、
 その後、現像をする事によって赤色感光層がシアン色素に、 緑色感光層がマゼンタ色素に、青色感光層がイエロー色素に反転変換されて、
 最終的にCMYの三層構造で色彩が記録されます。

 論理的には、3色の混合によって全ての色を再現できる筈なのですが、さらに特定の発色を良くする為に四層構造になっているフィルムもあり
 ます。

 なにやら難しい感じで説明をしてしまいましたが、簡単に言えば、色彩の基本となる3色を記録して、それを基に色彩豊かに記録するフィルム
 とでも覚えてもらえれば十分だと思います。

 今までは、写真撮影の中核ともなっていたカラーフィルムですが、最近では、デジタルカメラの普及により、かなり種類が縮小されながらも販売
 が継続されています。

白黒フィルム

赤外フィルム

カラーフィルム

次に、フィルムの形状による違いを説明します。

●35ミリフィルム

 今まで一般的に使われていたフィルムは、35ミリフィルムと言われています。
 35ミリフィルムは、135判フィルムとも言われており、カメラメーカーのライカ社が映画撮影用の35ミリフィルムを流用して小型カメラを販売
 した事から始まりました。
 今までの主流なフィルムになっていましたので、コンビニやスーパーなどでも気軽に購入できる程に入手が簡単で、金属性のパトローネに
 入れられており取扱も非常に簡単でした。
 最近では、デジタルカメラの影響もあってか、35ミリフィルムカメラの種類が少なくなっています。
 カメラメーカーによっては、既に35ミリフィルムカメラの生産が完了となっている所もあり、今後は、消滅していくと思われます。

●APSフィルム

 35ミリフィルムと比べると、磁気データの利用とカートリッジ化による高性能化を目指したフィルムがAPSフィルムでした。
 フィルムとしての取扱方が非常に簡単になっていたのですが、開発の途中で35ミリフィルムよりもフィルムの面積が縮小されてしまったの
 で、画質の魅力が半減してしまいました。
 プリントサイズが3種類(C判・H判・P判)もあり、カメラ側で選べるようになっていました。
 現在では、デジタルカメラの影響もあり、どこのカメラメーカーでもAPSフィルム用カメラの生産が、既に終了となってしまいました。
 APSフィルムの方は、フィルムメーカーによってその後も僅かに生産がされていましたが、今では、ついに生産完了となっています。



●ブローニ(120・220)フィルム

 35ミリフィルムよりも、さらにフィルムの面積が大きいのがブローニフィルム
 (中判フィルム)です。
 スプールという芯に巻かれた状態で、長さによって120判と220判に区別され
 ています。
 単に芯に巻かれた状態ですので、取扱を間違えると簡単にフィルムを駄目にし
 てしまいますので、注意が必要です。
 カメラによってフィルム面積が変更でき、一般的には、6X4.5センチ判・6X6
 センチ判・6X7センチ判が利用されていますが、6X8センチ判・6X9センチ判・
 6X12センチ判など、実に様々な規格のカメラが販売されています。
 フィルム面積が大きいので、大伸ばしプリントをした時に35ミリフィルムと比べ
 ると、遥かに素晴らしいし仕上がりを実現してくれますので、スタジオ撮影など
 での商業目的などで利用される事が多いです。
 もちろん風景写真などに利用しても、その恩恵を受けた仕上がりは、計り知れ
 ない程の違いを見せてくれます。

●大判フィルム

 ブローニフィルムよりも、さらにフィルムの面積が大きいのが大判フィルムです。
 シート状になっており、専用のシートホルダーに暗室や暗箱を利用して挿入し
 ます。
 一般的には、4X5インチ判が利用されていますが、8X10インチ判などの更に
 大きな規格のフィルムもあります。
 カメラやフィルムの取扱には、ある程度の専門知識を必要としますし、カメラの
 システム自体も大きくて高価な物になりますので、利用者が少ないのが現状
 ですが、写真の仕上がりは、最高の状態を得られます。


ここで説明した通り、フィルム形状の違いだけで多数の規格があり、実に様々な使われ方がされています。
風景写真に限った事で言えば、半切サイズや全紙サイズの大伸ばしプリントを前提とした画質優先で撮影をしている方々は、ブローニフィルム
を利用されている方を多く見かけます。

但し、ブローニフィルムでの撮影は、それなりの知識と技術に絵作りの感性が必要になって来ますので、万人に薦められる物ではありません
ので、普通に風景写真を楽しむのならば、35ミリフィルムで十分だと思います。
35ミリフィルムでの大伸ばしプリントに物足りなさを感じられる様になれば、ブローニフィルムに移行してみるのも良いかと思いますが、何の
撮影技術も持たないままに、最初からブローニフィルムを使うのは、ちょっと止めた方が良いと思います。


35ミリフィルム

APSフィルム

ブローニフィルム

次に、フィルムの感度について説明をしたいと思います。
実際には、フィルムの感度についてきちんとした知識を持たないままに撮影を続けている方々が、あまりにも多いので驚いた事が何度もあり
ました。
中には、低感度フィルムが性能が悪くて高感度フィルムが性能が良いと勘違いをしている方も多く、話をしていて非常に困った事もありました。
フィルム感度の違いによって、性能の良し悪しなどありませんので、きちんとした知識を持ってフィルムを選んでもらいたいものです。

さてそれでは、低感度フィルムと高感度フィルムの違いを説明したいと思います。
フィルムには、粒状性という画質密度のきめ細かさがあるのですが、低感度フィルムの方が細かく、高感度フィルムの方が粗いという性質が
あります。
大伸ばしプリントをした時に低感度フィルムの方が引き締まった画質を得られますが、高感度フィルムの方は、粗くザラザラした画質になります。
これだけを聞くと、低感度フィルムの方が優れていると思うかもしまれませんが、きちんとした適正な光量を得るのに低感度フィルムは、より多く
の露光時間が必要になるのです。

フィルムの感度表記は、[25][50][100][200][400][800][1600][3200]が基準になります。
数字が増えていく程に、同じ光量を得るためのシャッタースピードが一段分だけ早くなります。

例えば、感度400のフィルムで適正な光量を得るのに、1/250秒が必要だったとします。
これを感度50のフィルムで撮影した場合は、同じ光量を得るのに1/15秒も必要になり、手持ち撮影では、ブレが発生して失敗写真になって
しまいます。

初心者の方には、ちょっと理解するのにシャッタースピードに関する知識が必要になりますので、次項にて詳しく説明をしていますが、ここでは、
撮影場所の光線状態が良い時には、できるだけ低感度フィルムを使用して、光線状態の悪化に対応して高感度フィルムを利用するように、
フィルムの使い分けをしてもらいたいのです。

花や風景の撮影では、きめ細かさを出すために低感度フィルムを使用して、ポートレートやスナップなどの撮影では、少しだけ軟調な中感度
フィルムを使用し、室内や夜間などの撮影には、高感度フィルムを使用するのか一般的なのですが、自分の手持ち撮影でのシャッタースピード
の限界を確認して、色々な撮影に挑戦してみて下さい。

撮影場所の光線状態を見て被写体に合わせたフィルムの選択が出来るようになれば、作品の仕上がりも違ってくると思いますので、たくさんの
撮影経験を積んで適切な感度のフィルムを選べるようになって下さい。

次に、ネガフィルムとリバーサルフィルムの違いについて説明をしたいと思います。
ネガとかリバーサルって何?と、いう方々も多いと思いますが、一般的に利用されているフィルムは、明暗が逆転しているフィルムを使っている
方々が多いと思いますが、それがネガフィルムと呼ばれています。
フィルムベースにオレンジ層が使われていますので、色も逆転されていますが、実際には、違った色に見えていると思います。



ネガフィルム


ネガフィルムは、プリントをする事が前提のフィルムになります。

プリントをする段階で、濃度や色調の調整が可能になっていますので、撮影状態が悪いフィルムでも、かなりの
部分を調整して、仕上がりの綺麗な写真にする事ができます。
従って、同じフィルムから色調が違う写真を作り出す事ができますので、自分のイメージに合わせて同じフィルム
から何通りもの写真を仕上げる事が出来ます。
逆に言えば、一度プリントした写真とまったく同じ色調のプリントが仕上がってこない事が、当たり前でもあります
ので、プリントした写真は、世界にだだ一枚の物として認識して下さい。
焼き増し時に色調が違う事があっても、それはネガフィルムの特性になります。



リバーサルフィルム


リバーサルフィルムとは、濃度も色調も見たままの状態が記録されています。

ネガフィルムに比べるとプリント時の調整などがほぼ出来ない状態ですので、撮影状態が悪い場合は、そのまま
悪い状態でプリントされます。
従って、それだけ撮影技術に完成度が求められますので、自分の撮影技術の力量を確認する手段にもなります。
但し、現在の一眼レフカメラは、殆どが自動化されていますので、カメラ任せの状態でもそれなりの作品が撮れますので、以前と比べるとかなり気軽に使えると思います。
しっかりとした光線状態の下では、仕上がった写真の発色などもネガフィルムでは得られなかった仕上がりになる
場合もあり、風景写真では、好んで使用されている方々もかなり多いと思います。


どちらのフィルムも、特性の強い部分もあれば、弱い部分もありますので、どちらが良いとは言えませんのが、自分の撮影技術を向上させよう
とする考え方から捉えれば、リバーサルフィルムの使用をお勧めします。
失敗した撮影は、フィルムを見れば一目瞭然ですので大いに反省する部分がハッキリと分かると思います。
但し、結婚式や家族旅行などの失敗できない撮影などは、失敗の少ないネガフィルムの方がより確実な撮影が出来て、みんなにも喜ばれる
事と思います。
初心者と言えども、その時々の状況に応じて確実に使い分けれるようになりたいものです。

今回は、フィルムの形状、感度、ネガとリバーサルの違いについて説明しましたが、この他にも銘柄による違いや乳剤のばらつきなど、フィルム
選びの要素が、まだまだたくさんあるのですが、そこまで説明をすると初心者を対象とした物では無くなってしまいますので、ここまでにしたいと
思います。
とにかく興味のあるフィルムは、どんどん使ってみて、その仕上がりを見てから自分の撮影に利用できるのか、利用できないのかを判断して、
それで得た知識を、いろんな撮影に役立ててもらいたいです。

最近は、デジタルカメラに撮影機材を移行する方々を非常に多く見かけます。
デジタルは、もちろんフィルムなど使いませんが、光量調整などの部分にネガフィルムの特性を利用した解釈が用いられている事が殆どです。
感度調整や色調の変化などは、フィルムの知識が有ってこそ、始めて理解できる事ばかりですので、ここで説明した事は、デジタルに移行して
からも、かなり重要な部分ですので、しっかりと憶えておいてもらいたいです。

1:自己紹介

2:はじめに 3:撮影機材の選び方 5:画角の変化 6:絞りとシャッター速度
7:構図の決め方 8:撮影用フィルター 9:作品を見てもらおう リンク ゆーしの戯言

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