写真講座

初心者を対象とした、とても簡単な風景写真の撮影講座です。

写真講座6:絞りとシャッター速度

フィルムには、そのフィルム感度に合った適切な光量を正しく与える事が必要で、この事を適正露出といいます。
フィルムに適正露出を与えるためには、絞りとシャッター速度という2つの要素を操作して行います。

絞りとシャッター速度の操作を誤って与えた光量が多かった場合は、写真が白っぽくなり露出過度と言います。
逆に与えた光量が少なかった場合は、写真が暗くなり露出不足と言います。

この露出の部分は、最近のAFカメラ等では、完全に自動化されていますので、撮影者が意識する事が無いように設計されているのですが、
その為に、撮影の重要な基礎知識であるにも関わらず、きちんと理解されていない方々が多いのが現状のようです。

一般的なカメラのレンズには、そのレンズの明るさを示すF値と呼ばれる数値があります。
明るさは、口径比で表す事ができ、レンズの有効口径(実際に使うレンズの最大直径)と焦点距離の比で表します。

F値(口径比)=焦点距離/有効口径で、レンズの表示は、1:焦点距離/有効口径で表されます。
値が小さいほどレンズを通す光量が多く、明るいレンズという事になります。

F値の系列は、[1][1.4][2][2.8][4][5.6][8][11][16][22][32]が基準になり、基準の数値が増える程に、光量が半減して
いきますので、同じ光量を得るのに時間がより多く必要になります。
F値2.8で撮影した場合にシャッター速度が1/250秒だったとしますと、同じ光量を得るのにF値8の場合は、シャッター速度が1/30秒
にもなり、手持ち撮影では、手振れなどの不安も出てくる速度になります。

このF値を調整する部分が絞りになります。
絞りは、レンズ内に設置されていて、数枚の薄い金属板で作られており、光の通る空間を調整する事が出来るようになっています。
レンズの性能表などで、絞りF2.8〜22となっていれば、F値が2.8から22の間で光量を調整する事が出来るという事になります。

ここまでの話だけを聞くとF値の明るい方が良いように感じる方も居ると思いますが、F値には、もう一つ重要な要素があります。
レンズの性能には、被写界深度という物がありまして、これは、ピントが合った時に、そのピントが合っている前後の距離の事を言いますが、
F値が明るいと、その被写界深度が狭くなります。

逆にF値が暗い場合は、その被写界深度が広くなります。

風景写真などの場合は、被写体の手前から奥まで、きちんとピントの合った
写真を撮ろうと思うと、被写体への撮影距離にもよりますが、ある程度の被写
界深度が必要な事から、基本的には、F値8から11辺りを使用する事が多く
なります。

高額なズームレンズで撮影したのに、仕上がった写真のピントが甘いと騒い
でいる方の話を聞いた事があるのですが、撮影時のレンズの明るさがF値
2.8と明るくて、手持ち撮影していたという事から、手振れによるピント不良
と、被写界深度が狭い為に、ピントの合った被写体の前後に、ピントが合って
ない部分が発生しやすくなっているという、絞りに関しての知識不足から来る、
無知な撮影者なのだと呆れる事もありました。

右の写真は、同じ場所から絞りを変えて撮影したものです。
絞りによって被写体の背景が、どの様に変化するのかが分かると思います。

この絞りという部分は、写真の表現方法としてもっとも基本的な部分になり
ますので、しっかりと理解しなければ自分なりの表現をする事が出来ないと
思いますので必ず理解するようにして下さい。
 

絞りF2.8
被写界深度が狭いので
背景のボケが大きい

絞りF32
被写界深度が広いので
背景のボケが小さい

カメラには、シャッターという部分があります。
シャッターは、適正な光量だけをフィルム面に与える為に、光がフィルム面に当たっている時間を調整します。

基本的に、[4秒][2秒][1秒][1/2秒][1/4秒][1/8秒][1/15秒][1/30秒][1/60秒][1/125秒][1/250秒][1/500秒]
[1/1000秒][1/2000秒]などと表記されています。

シャッターの最高速が、1/8000秒程度が
一般的なのですが、1/12000秒まで調整
できる物もあります。

この数値は、人間の視覚に分かりやすいよう
に表記されていますので、実際にこの表記と
は、微妙に違っているのですが、あまり気に
しなくていいと思います。

但し、この数値が早くなるほど、フィルム面に
届く光量が半減して行きます。
シャッター速度が、1/30秒の時に、適正露
出に必要なF値が8だったとすると、同じ条件
で、シャッター速度を1/250に変更すると、
適正露出に必要なF値が2.8になります。

普及タイプのAF一眼レフカメラでも、30秒
から1/4000秒程度の調整が出来るように
なっています。
フィルム面に対する光量調整という役割も
あるのですが、実際には、被写体に対する
動作の表現方法をする場合に使われる事が
多いです。

被写体が動いていた場合に、その被写体の
動いている事を表現するのか、その被写体
の静止した一瞬を表現するのかで、写真の
雰囲気が違って来ます。

シャッター速度1/80秒
水が静止している

シャッター速度1秒
水が流れている
上の写真は、同じ被写体を、シャッター速度を変えて撮影したものです。
シャッター速度が早い写真は、水の流れが止まって写っていますが、シャッター速度が遅い写真は、水が流れて写っています。
シャッター速度を変えるだけで、まったく印象の違う作品になりますので、色々と試してみて下さい。

被写体への適正露出の量を表す数値に、EV(Exposure Value)と言う物があります。
被写体の適正露出は、被写体の明るさ・フィルム感度・絞りF値・シャッター速度の4つの関係から決まります。
基準は、感度100のフィルムで、絞りF値が1の時に、1秒の露出で適正露出が得られる場合のEVが0になります。
上記の条件から、絞りを1段絞るか、シャッター速度を1段早くするか、フィルム感度を2倍にするかで、EVが1づつ増えて行きます。
EVは、数値が小さいほど被写体が暗く、数値が大きくなるほど明るくなります。

一般的には、感度100の場合で、晴天時の昼頃の明るさがEV13前後になります。
このEV13を、絞りとシャッター速度で表すと、

[F2.8で1/1000秒] [F4で1/500秒] [F5.6で1/250秒] [F8で1/125秒] [F11で1/60秒]

となり、どの組み合わせでも、同じ露出量EV13になります。
写真を写すには、フィルムに当てる光量が、多すぎても少なすぎてもいけないのですが、実に様々な組み合わせがありますので、一定の光量
を表す数値として、EVがある事を憶えておいて下さい。
ある程度、本格的に撮影と取り組もうと思った時に必ず必要になる知識になりますので、参考程度でも構いませんので憶えておいて下さいね。

風景写真を撮影されている方の中には、露出の調整を自動AEモード(Pモード)で撮影されている方も居ると思います。
絞りやシャッター速度の調整をカメラ任せにしていると、作品としては、良くも無く悪くも無いと言った感じの作品しか撮れなくなってしまいます。
自分なりの表現を写真という作品で表現する為には、絞りやシャッター速度の調整をして自分の作品としての表現を心がけてもらいたいです。

そこで独自の調整をする上で気を付けてもらいたいのですが、カメラの露出は、人肌の反射率に調整されているという事を憶えておいて下さい。
人物を撮影する場合には、非常に有効なのですが、風景写真の場合には、自動露出が合っていない場合も出てきますので、注意が必要に
なります。

人肌の反射率に調整されていますので、黒い被写体を人肌の反射率(灰色)に合わせようと、又は、白い被写体を人肌の反射率(灰色)に
合わせようと、露出が自動で調整されてしまう場合があります。
その為に、最近のAF一眼レフカメラの殆どには、露出補正の機能が搭載されています。

反射率の違いにより、灰色に調整された露出結果を補正する事が出来るようになっています。
実際には、黒い被写体なのに、明るく灰色に調整された場合は、黒くする為に暗く(マイナス補正)調整をします。
逆に、白い被写体なのに、暗く灰色に調整された場合は、白くする為に明るく(プラス補正)調整をします。

調整幅は、その時の光線状態にもよりますので、一概に言えないのですが、0.5〜1.5EV程度の幅で対応できると思います。


−0.5EV補正


標準


+0.5EV補正

 この露出補正は、写真が仕上がってみな
 いと結果が分かりませんので、初心者に
 は、非常に難しい部分になります。

 そこで、特に失敗したくない場合には、
 露出補正の量を段階的に数枚撮影する、
 段階補正撮影をする事をお勧めします。

 露出を少しづつ変えて、マイナス補正→
 標準→プラス補正と、5コマから7コマ程度
 の撮影をしておけば、どれかが自分の思い
 描いた露出になっていると思います。

 カメラによっては、自動での段階補正機能
 が搭載されている場合もあります。

 それを繰り返す事によって、撮影の経験を
 積み重ねると、自分なりの露出の決定が
 出来る様になってくると思います。

絞りとシャッター速度の組み合わせにより様々な撮影表現が出来るようになれば、あなたの作品に表現の幅が出来ており、素晴らしい作品を
次々と生み出している事と思います。
風景写真で、自分なりの表現をする為の最低限の撮影知識ですので、必ず自分の身にするように頑張って下さい。

1:自己紹介

2:はじめに 3:撮影機材の選び方 4:フィルムの選び方 5:画角の変化
7:構図の決め方 8:撮影用フィルター 9:作品を見てもらおう リンク ゆーしの戯言

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